サンガンピュールの物語(お菓子の国)11話-11-彼女は、名古路のダイイングメッセージを頼りに、先に逃げた日数谷の行方を追うことにしたが、確かな手掛かりはどこにもなかった。とりあえず幹部一人が消えた報告も兼ねて足立区のお菓子の国に戻ることにしたその時だった。飛行中に自分の携帯電話が鳴った。急いで着地するサンガンピュール。電話の相手はKだった。 「おい、マジでやばいぞ!」 「どうしたの?」 「チクロンBが予告通り来たぞ!」 まだ午前中である。前日の不安が的中してしまった。 「うっそ、大変じゃん!」 「しかも大人数だ、急いで帰って来てほしい!」 「分かった!」 ここで電話を切ろうとした時、Kが釘を刺した。 「待ってくれ!あいつらに対して単に『二度と来んなよ!』と追っ払っても、何度も襲って来るだろう。追っ払うんじゃ意味無い。現にこっちは仲間が一人殺されてんだから。サンガンピュールを怒らせたらえらい目に遭うことを分からせなきゃ!」 とにかくお菓子の国を守ると決意した以上、本気で戦う。彼女は改めて決意した。 「サンガンピュールはどこだ!」 お菓子の国の前ではそんな怒号が飛んでいた。声の主は安本。チクロンBの安本と子分達が足立区のお菓子の国を再び襲った。目視だけでも総勢で50人を数える大集団だ。 「あたしはここよ!」 空から地上へ降りてきたサンガンピュールが名乗り出た。彼女が迎え撃つ子分達はナイフやら電動のこぎりといった危険な武器を持っている。 「ここはあたしに任せて!おじさんや職人さん達は早くここから逃げて!」 サンガンピュールは職人に対して避難を呼びかけた。 彼女と対峙した部下の一人が言った。 「昨日、この工場から『サンガンピュール、もう帰るぞ』とか『この集団は守られる資格は無い』という言葉が聞こえたぜ。お前・・・、奴らがどんなに身勝手か分かったろ。だから、お菓子の国を守るのは諦めな!」 続いて安本がサンガンピュールに偉そうに忠告した。 「そうだぞ、お菓子の国とは縁を切った方が身の為だぞ」 これに対しサンガンピュールは 「・・・断る」 と最初は小声で拒否した。 「ん?もう一度言ってみな」 「断る!」 はっきりと聞こえる声で改めて拒否した。 「そうか、・・・断るなら殺すまでだ!」 安本がそう言った後、部下がひそかにある行為を催促した。 「安本さん、渡すものがあるんじゃないんですか?」 「あっ、その前にお前に渡すものがある」 彼女の頭の中には大きな疑問符が浮かび上がった。しかし安本から渡されたのは手紙の入った封筒だった。 「万が一俺らを倒せたらこの封筒を開けて読んでみろ!」 と安本はこう言ってのけた後、空のビンを大量に用意した。手には金属バットを抱えている。何をしでかすのか。なんと、野球のノックのようにサンガンピュールに対して空きビンを打ち始めたのだ。選手に対してノック練習を行うコーチのような安本は、次々に打つ。サンガンピュールは最初の内は避ける余裕があったが、ガラス製の空きビンはまだ底を尽きそうにない。そして、8球目に避けきれずに足にぶつけてしまった。硬いガラスがあたり、堪える。さらには自分の目の前で割れた空きビンのガラスで自分のストッキングが破けてしまった。切り傷もできていた。 「おい、どうした?もう降参か?ハハハハハ・・・」 挑発する安本に対し、彼女は遂に本気を出した。14球目をフォースで安本の額を目掛けて飛ばしたのだ。突然の出来事に慌てて右腕で覆う安本だが、右腕には激痛が走った。 「痛えな!何すんだよ!」 サンガンピュールは言った。 「あたしは・・・、あたしは、お菓子の国の人達に約束した。絶対にあんた達から守ってみせるとね!だから、あんた達には、負けない!絶対に!!」 これを自分たちへの挑戦と捉えた安本を始めとするチクロンBの面々。 「ほう、その言葉通りの力を持ってるか、試してやろうじゃんか。野郎共、行くぞ!」 「おう!」 サンガンピュールの実力を知らないからこそできた掛け声なのかもしれない。そんな中で彼女と安本らとの戦いが始まった。 チクロンBの集団は「イヤアアアアアッ!」と威勢よく襲いかかった。安本は指揮官らしく後ろで待機している。サンガンピュールはライトセイバーを出すのを一旦遅らせ、集団が近づいた途端にライトセイバーで迎え撃った。鋭利なナイフや電動のこぎりを武器にして戦う恐ろしい集団だった。残ったガラスビンをわざと割り、鋭利な武器に仕立てて戦う者もいた。それを投げつけられた結果、右足をケガした。しかし「負けない」と言った彼女には彼ら以上の闘志が宿っているように見えた。しかし彼女はそれをもろともせず、次々と斬っていく。死屍累々と重なる屍。 「うっ・・・、逃げろ!」 2~3人の部下が逃げようとしたが、安本によって背後から銃で撃たれて殺された。この悲惨な光景を見たサンガンピュールは 「・・・なんて奴らなの!」 自分のことを棚にあげて驚くしかなかった。 部下が次々と倒れた結果、残ったのは安本他数名。「これはチャンスだ!」彼女はその場に転がっているガラス片を安本にぶつけた。安本はそれをよけようとして左手で顔を覆ったが、それで激痛が走った。安本がひるんだすきにサンガンピュールが自分のすぐ対面に来た。「ハッ!」と驚きの表情を見せた安本に対し、彼女はガラス片を武器に彼の腹部をパンチ!そしてライトセイバーで最後の一撃!高熱の武器で腹部を貫通された。指揮官がやられたことを知った部下数人は降参した。 結果、安本は死んだ。ガラスの破片とライトセイバーによって死んだのだった。 (第12話に続く) ジャンル別一覧
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